054506 ランダム
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太陽の香

太陽の香

最期2

看護士はナースステーションで父の心拍数をみていました。
かなり弱いというのです。

私は急いで下の弟を携帯で呼びました。
弟は何も買わずに急いで戻ってきました。
私たちの必死の呼びかけにも何の反応もない父。
看護士は医師を呼びに行きました。
母は叫び続けました。
指先が冷たくなってきました。
熱があった父の体がまだ温かいので、母は熱を測らせて欲しいと看護士に頼みます。
「今、お熱を計られても・・」そんなことはどうでもいいと母は体温計をもらうと父の体温を測りました。
38度・・・まだこんなに熱がある!
「お父さん!お父さん!」消灯後の病棟に響き渡ったことでしょう。
医師がきて、瞳孔・脈・肺・心臓の音をチェックしました。。
「完全な”死”の状態です」医師の言葉に母は泣き崩れました。
「確認してもよろしいでしょうか?」医師が尋ねます。
「はい・・」と家族
「9時53分でした・・」医師の最期の確認のあとも母は叫び続けました。
まだ聞こえているかもしれないと・・。
下の弟も涙が止まらず、それでも父の足をもみ続けました。
「そんな早く・・・」祖母も力のない声を出し、泣きました。
上の弟と私。
こういうとき、長男・長女の性でしょうか・・・
私は祖父母・父の兄弟である伯父・伯母、夫に病室から亡くなったことを伝える電話をしました。
「落ち着いたら、声をかけてください」看護士はそう伝えると医師と部屋を出て行きました。
「お父さん、頑張ったね」
弟たちは順番に父とおでこを合わせ、何かを感じとっていました。
母は父をさすり、祖母も近くに座り・・私は!?
私はなぜか近づくこともできずに佇みました。父に抱きつけばよかったのに。


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